小畠病院(福山市駅家町)

ピロリ菌の検査と治療について

消化器内科 原 睦展

1.ピロリ菌について

ピロリ菌は「ヘリコバクター・ピロリ」といい、1979年西オーストラリア大学のウォーレン名誉教授とマーシャル教授が発見し、2005年のノーベル医学生理学賞を受賞しました。

2.ピロリ菌と疾患について

1)胃炎について

ピロリ菌に感染すると慢性胃炎が起こりますが、無症状のことが多いです。

2)胃・十二指腸潰瘍について

粘膜の抵抗力が弱いときに胃酸が胃や十二指腸の粘膜を溶かしてしまう状態を胃・十二指腸瘍潰と呼び、腹痛を伴うことが多いです。

3)胃がんについて

胃の組織に悪性の細胞(がん細胞)が発生する病気を胃がんと呼んでいます。胃がんは長期にわたり症状が出ないことがあります。

4)その他

特発性血小板減少性紫斑病、MALTリンパ腫もピロリ菌の除菌をすることで、病態の改善が可能です。

3.ピロリ菌の感染を確認する検査

60歳代以上の日本人の半数がピロリ菌に感染しているといわれていますが、若い世代の感染率は数%といわれています。
ピロリ菌の検査をする際には、胃がんなどの病気の有無を確認しておく必要がありますので、必ず内視鏡検査をしなければなりません。

1)内視鏡を使わない方法

 尿素呼気試験法
診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断します。
最も精度の高い診断法です。簡単に行える方法で、感染診断前と除菌 療法の除菌判定検査に推奨されています
 抗体測定
ヒトはピロリ菌に感染すると、菌に対する抗体をつくります。血液中や尿中などに存在する抗体の有無を調べる方法です。
 糞便中抗原測定
   糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。

2)内視鏡を使う方法

内視鏡検査では、疾患の有無を直接観察して調べますが、それと同時に、胃粘膜や粘液を採取しそれを使って検査する方法です。
 PCR診断法
    内視鏡検査の際に胃液を採取し、拡散増幅法(PCR)によりヘリコバクターピロリ核酸を測定します。同時に、クラリスロマイシン耐性遺伝子を検出することができます。
 迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持っているウレアーゼという、尿素を分解する酵素の活性を利用して調べる方法です。採取した粘膜を特殊な反応液に添加し、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。

4.ピロリ菌の除菌と除菌後の判定

1)ピロリ菌の除菌

ピロリ菌の除菌には、胃酸の分泌を抑制する薬と2種類の抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)が用いられます。この三種類の薬を一週間服用することで、約8割の方は除菌に成功すると報告されています。約2割の除菌に失敗した方も、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更して再度除菌することが出来ます(二次除菌)。
クラリスロマイシン耐性遺伝子が検出された場合は、最初から二次除菌の薬剤で除菌を行います。

2)除菌後の検査の重要性

除菌後にも胃がんが発見されるなどの報告もありますので、定期的に内視鏡検査をしていく必要はあります。粘膜にとどまる胃がんは、内視鏡で治療可能ですので早期発見することが重要です。

 

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