小畠病院(福山市駅家町)

慢性頭痛の診断と治療

慢性頭痛の症状と診断について

脳神経内科 小畠 敬太郎医師

はじめに

 頭痛にはクモ膜下出血のように見落とせば重大な結果をもたらすものから、片頭痛などいわゆる頭痛持ちといわれるような慢性頭痛まで実に多岐にわたります。

 全国的な調査によれば15歳以上の一般成人では30-40%の人が慢性の頭痛に悩んでいるとのデータがあります。15歳以上の府中市民は約4万人ですから府中市には約1万2千人以上の頭痛に悩む人があると推定されます。

頭痛の種類。悪玉と善玉があります。

 頭痛は大きく二種類あります。国際頭痛分類第2版によると(Ⅰ)一次性頭痛;基礎疾患のない頭痛で、頭痛そのものが病気です。生命には差し障りはなくいわば“善玉”の頭痛と、(Ⅱ)二次性頭痛;クモ膜下出血や脳腫瘍など生命にかかわることのある病気によるもので、いわば“悪玉”の頭痛です。

 多くの人がクモ膜下出血や脳腫瘍などの器質的な病気があるのではないかと心配して医療機関を受診されますが、皆さんが思われるほどそのような病気による頭痛は多くありません。さらに診療する医師もそのような悪玉の頭痛を特に見逃さないように注意しています。そしてCTやMRIなどの画像検査にも異常がなければ悪玉の頭痛ではないということです。

 しかしCTやMRIを撮って頭の中は大丈夫といわれてもまだ頭痛がよくならないという人は少なくありません。そのような人の多くは次の善玉の頭痛(一次性頭痛)のいずれかでしょう。

1次性頭痛の診断と治療

 一次性頭痛には次の3つの頭痛があります。

(1)片頭痛: 
 頭痛発作を繰り返すもので、発作は4―72時間続く。痛みは片側性の拍動性です。動くと悪化するので痛む間はじっとしていたいのが特徴。頭痛がひどいと悪心や嘔吐を伴います。若い女性に多く(男性の3―4倍)、母親が片頭痛なら娘もなることが多いのです。まれな病気ではありませんが実際に医療機関を受診する人はごく一部です。

 なお片頭痛の中には様々な前兆を伴う型があります。前兆は5~20分にわたり徐々に進展して上記のような頭痛が現れます。その多くは目の前がチカチカあるいはキラキラ輝いて部分的に見え難くなる視覚的なものです。
多くの方々が一側の頭が痛むとみな片頭痛だと思っておられますが、実は本当の「片頭痛」はそれ自体が「片頭痛」というという立派な病気なのです。この頭痛は脳の血管が収縮した後で拡張することによって起こるものと考えられています。

 現在は片頭痛の発作時には特異的治療薬(トリプタン製剤)があり、適切な使い方をすれば大変よく効きます。頻回に発作が飽きる場合は予防薬を服用していただきます。

(2)緊張型頭痛: 
 最もありふれた頭痛で、成人の約22%の人が悩んでいるとされています。その頭痛は両側性で、締めつけられたような持続的な痛みです。頭重感や肩こりがあり運動や入浴で軽快します。この頭痛も女性に多いのですが男女とも老若を問いません。原因は後頭部-首-肩の筋肉の緊張、あるいは精神的ストレスにあります。顎関節の異常によることも少なくありません。

 治療には、ストレスの解消、体操や入浴などで心身の緊張をほぐすことです。薬物療法には筋弛緩剤や、痛みに対して消炎鎮痛剤を使用することがあります。

(3)群発頭痛: 
 この頭痛は稀で女性より男性に多く、その痛みは激烈で片側の前頭部から眼窩にかけてえぐられるような痛みです。頭痛の持続は30-120分と短く、一度起こるとしばらく(1週間~1ヵ月)毎日群発します。痛みは夜間に多くアルコールで誘発されやすい。痛みはきわめてひどくじっとしていられないほどです。発作中は涙や鼻水が出たり結膜が充血することがあります。

 治療にはトリプタン製剤の注射が有効です。高濃度の酸素吸入なども効果があります。夜が怖くて眠れないという人もありますが、保険で使える予防薬があります。

頭痛診療にあたってのモットー

頭痛の患者さんの診療にあたって、私は次のようなことを心がけています。

 即ちはじめに述べた悪玉の頭痛(危険な2次性頭痛)を除外したら、次は片頭痛を見逃さないことです。定型的な片頭痛を診断することは難しいことではありません。また正しい診断によって適切な治療が行えます。しかし最近ではもともと片頭痛がベースにあっても、ひどい肩こりや首の凝りがあったり、抑うつ状態であったり、市販薬の飲みすぎなどによって診断に難渋することもしばしばです。病歴をよく聞き、頭痛ダイアリーをお渡しして毎日痛みの有無・程度・性状、日常生活の支障度、薬物の服用状況などを記録して頂いて、より正確な診断を行います。その上で適切な治療や生活指導をさせて頂きます。

 初診の患者さんでは頭痛の起こり方、起こってからの経過、頭痛の性状(割れるような痛み?拍動性の痛み?しめつけられるような痛み?)、痛みの持続時間、時々起こるものか、今回初めての痛みか、頭痛とともにある症状(吐気などの随伴症状)の有無、家族歴など出来るだけ患者さんのお話を聞くようにしています。大半の患者さんはこのような問診だけで診断は可能です。よくお話を聞いた上で診察をして、頭の中の病気がありそうかどうかを見極めます。このため初めての患者さんの診察には30分以上かかることがあります。CTやMRIは、あくまで腫瘍やクモ膜下出血などがないことを確認するためのツールです。

 当院では、頭痛の患者さんの診療は神経内科医が外来で行います。

 上で述べた3つの一次性頭痛を正しく診断し、適切な治療ができれば頭痛に悩む患者さんの日常生活の質(QOL)は大きく改善すると思います。 慢性の頭痛でお困りの方は、「頭痛ぐらいで病院へ行くなんて」とか「精神的なものだろう」なんて我慢しないで遠慮なくご相談ください。病院で十分納得のいくまで医師に尋ねてください。ご自分が納得できれば多くの頭痛は解決されると思います。

 なお重ねて強調しておきたいことは、頭痛に悩む人が頻回に片頭痛の急性期治療薬や鎮痛剤を服用していると、頭痛はかえって悪化します。これは薬物乱用頭痛といわれるものです。国際頭痛分類では二次性頭痛に分類されています。急性期治療薬や鎮痛剤は出来れば月に10回までにとどめてください。

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ご参考に

頭痛の解説にはさまざまな出版物やホームページがあります。私がお奨めするのは以下の二つです。

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