小畠病院(福山市駅家町)

身近に潜む病気、非結核性抗酸菌症について

呼吸器内科 船石 邦彦医師

非結核性抗酸菌って何?

結核菌と名前が似ていますが、結核菌と似て非なる細菌で人から人へは感染しません。
土壌や水周りなど環境中のどこにでも居る細菌で、これまでに約150種類以上が確認されていますが、そのうち大部分をマイコバクテリウム・アビウムとマイコバクテリウム・イントラセルラーレ複合菌という菌種が占めています。意外と身近にいる菌でもあります。以前はもともと肺に病気をもつ人の免疫力が低下した場合に起こりやすいといわれていましたが、最近では肺に病気がなく免疫力が正常な人にも増加していると報告されています。

非結核性抗酸菌症(NTM症)とは

非結核性抗酸菌(NTM:Non-Tuberculous Mycobacteria)が肺に感染して起こる病気です。痩せ型の中高年女性に多く、肺結核が減少しているなか非結核性抗酸菌症は年々増加しており、今後もますます増えていくことが懸念されています。

主に浴室や土を扱う作業で空気中にただよう非結核性抗酸菌を吸い込むことにより感染すると考えられており、多くは数年から10年以上かけてゆっくりと進行すると言われております。

症状

症状がなく健康診断で初めて指摘されることもあります。主な症状としては、慢性的に続くせきや痰、息切れなどが挙げられます。病状が進めば血痰や体重減少、呼吸困難などが出ることもあり、これらを放置したままにすると最終的には呼吸不全に至る難治性疾患です。
2018年の厚生労働省の人口動態調査では、年間1,019人がこの病気により死亡していたことが報告されており、罹患者増加に伴って死亡者数も急速に増加することが懸念されます。

診断と治療

痰から非定型抗酸菌が出てこないか培養検査を行い、2回以上同じ菌が出ることで診断します。
また胸部レントゲン写真やCT検査も行われます。


非定型抗酸菌症の胸部CT写真

(c) 空洞や肺の中に結節(白い塊のようなもの)が肺の中に散らばっています。
(d) 肺の構造が非定型抗酸菌によって破壊された結果、気管支が拡張しています
(Kekkaku Vol. 84, No. 8 : 569_575, 2009より転載)
治療は数種類の抗菌薬を併用し、これらを「痰から菌が検出されなくなってから1年間」を目処に継続します。確実に治療をするために内服は毎日欠かさずに行う必要があります。病気の進行には個人差がありますので、軽症の時には抗菌薬を使用せず経過観察のみ行うこともあります。この病気は結核と違って人から人にうつすことはないので、日常生活においては特に制限はありません。ただ、非定型抗酸菌は主に水回りや土壌にいることが多いので、自宅内では菌の住みつきやすい場所(風呂場、シャワーヘッドなど)を清潔に保つようにしましょう。

まとめ

非結核性抗酸菌症は、免疫力の落ちている高齢者にとっても注意が必要な感染症です。症状に気づいたら、早めに専門の医師に相談し適切な対応を取りましょう。予防のためにも健康的な生活習慣や衛生管理が大切です。

 

小畠病院 呼吸器内科の診療・外来案内はこちら

電話をする
ページトップへ