小畠病院(福山市駅家町)

慢性頭痛について

脳神経内科 小畠 敬太郎医師

 頭痛にはクモ膜下出血のように見落とせば重大な結果をもたらすもの(悪玉頭痛)から、典型的な片頭痛や慢性的に頭痛を繰り返していわゆる「頭痛持ち」として痛み止めですませている人まで多岐にわたります。
 頭痛の診療には丁寧な問診が大切です。先ず病歴から、突発する頭痛、今まで経験したことのない激しい頭痛、だんだん強くなってくる頭痛、麻痺や意識障害があるような患者さんは頭蓋内に重大な病気がある可能性があります(二次性頭痛・悪玉頭痛)。頭痛の診療ではそのような悪玉の頭痛を見逃してはいけません。病歴に加え診察所見に異常がなく、CTなどの画像検査にも異常がなければ悪玉の頭痛ではないでしょう。そのような人の多くは次の一次性頭痛(善玉頭痛)のなかのいずれかでしょう。

一次性頭痛には次の3つの頭痛があります。

① 片頭痛

 頭痛発作を繰り返すもので、発作は4―72時間続き、痛みは片側性の拍動性です。動くと悪化するので痛む間はじっとしていたいのが特徴で、頭痛がひどいと悪心や嘔吐を伴います。若い女性に多く(男性の3―4倍)、母親が片頭痛なら娘もなることが多いのです。15歳以上の日本人の8.4%が片頭痛というデータがあり、まれな病気ではありません。自分は頭痛もちだと思って鎮痛剤を常用している人が少なくありません。
 なお片頭痛の中には様々な予兆や前兆を伴う型があります。前兆は5~20分にわたり徐々に進展して上記のような頭痛が現れます。目の前がチカチカあるいはキラキラ輝いて部分的に見え難くなる視覚的なものです。
 多くの方々が一側の頭が痛むとすべて片頭痛だと思っておられますが、実は本当の「片頭痛」はそれ自体が「片頭痛」という立派な病気なのです。この頭痛は脳の血管が収縮した後で拡張することによって起こるものと考えられています。
 片頭痛の発作時には特異的治療薬(トリプタン製剤)があり、適切な使い方をすれば大変よく効きます。頻回に発作が起きる場合は予防薬を服用していただきます。

② 緊張型頭痛 

 最もありふれた頭痛で、成人の約22%の人が悩んでいるとされています。その頭痛は両側性で、締めつけられたような持続的な痛みです。頭重感や肩こりもあり運動や入浴で軽快します。この頭痛も女性に多いのですが男女とも老若を問いません。原因は後頭部-首-肩の筋肉の緊張、あるいは精神的ストレスにあります。顎関節の異常によることも少なくありません。
 治療には、ストレスの解消、体操や入浴などで心身の緊張をほぐすことです。薬物療法には筋弛緩剤や、痛みに対して消炎鎮痛剤を使用することがあります。

③ 群発頭痛

 この頭痛は稀(成人の0.1%)で女性より男性に多く、その痛みは激烈で片側の前頭部から眼窩にかけてえぐられるような痛みです。頭痛の持続は30-120分と短く、一度起こるとしばらく(1週間~1ヵ月)毎日群発します。痛みは夜間に多く、発作期間中は夜が怖くて眠れないという人もあります。アルコールで誘発されやすく、痛みはきわめてひどくじっとしていられないほどです。発作中はしばしば頭痛と同側の結膜充血や流涙、さらに鼻汁あるいは鼻閉などを伴います。治療にはトリプタン製剤の点鼻や注射が有効です。高濃度の酸素吸入なども効果があります。

 ここで一つ盲点になりやすいのが「薬物使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH)」です。片頭痛や緊張型頭痛などと診断されて鎮痛剤を処方されている人のなかに、知らず知らずのうちにその使用日数が増え、それと同時に頭痛も毎日認めるようになります。あるいは自分は「頭痛もち」だと思って勝手に自分で痛み止めを常用している人にも見られます。このタイプの頭痛は毎日頭痛があり、特に朝起床時から頭痛を認めます。診断は病歴をよく聞くことが決め手です。治療は鎮痛剤を思い切って中止することです。

 慢性の頭痛でお困りの方は、十分納得のいくまで医師に尋ねてください。ご自分が納得できれば多くの頭痛は消失すると思います。

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*広報誌「葦」168号の記事(病気のコラム)より(pdfデータで読みたい場合はクリック)

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