眼科 瀧川 泰医師
現在、日本では糖尿病患者が約1,000万人、予備軍が約1,000万人と推定されており、成人の5人か6人に1人が糖尿病またはその予備軍と言われています。
糖尿病になると目にも色々な合併症がおこり、神経症、腎症、網膜症を糖尿病の三大合併症と言います。
具体的には、①角膜障害 ②眼筋麻痺 ③白内障の進行 ④ぶどう膜炎 ⑤緑内障 ⑥糖尿病網膜症などがあります。
この中でも特に重要な合併症は⑥糖尿病網膜症です。これは目の底の網膜が血流障害を起こし、色々な症状が出てきます。まずは初期から末期まで大まかに三段階に分けられます。
(1)単純網膜症
網膜に毛細血管瘤という小さいこぶ状の変化が現れ、また点状の出血やシミ状の出血、線状の出血などが出てきます。その他、硬性白斑という白点状の変化も出てきます。ただこのステージでは視力低下はほぼ起こらず、患者さん本人も気が付きません。
(2)増殖前網膜症
単純網膜症がさらに進行した状態で、軟性白斑という網膜が虚血に陥った変化が現れ、また血管の走行異常も認められるようになります。出血もかなり多く見られるようになります。この時点でもまだ視力は正常かやや低下するに留まります。
(3)増殖網膜症
さらに網膜症が進行してくると網膜の虚血が原因で網膜上に新生血管という新しい血管が出来てきます。
この血管は非常にもろく、それが破綻すると硝子体出血を起こし一気に視力が低下してきます。また増殖膜という膜が網膜に張り巡らされてきて、それが原因で網膜剥離を起こすこともあります。このステージになると視力は極端に低下します。
以上が主な経過ですが、治療として一番大切なのは糖尿病自体のコントロールです。糖尿病のコントロールが悪い方や糖尿病の病歴が長い方は、やはり網膜症が悪化しやすいです。
現在、糖尿病網膜症の治療として網膜光凝固術や硝子体手術、硝子体内への薬物の注射などがあります。また補助療法として血管強化剤や循環改善剤などの内服をすることもあります。最近は硝子体手術が発達し、昔に比べると失明する危険性はかなり改善されてきましたが、増殖網膜症まで進むとかなり視力が低下したままになります。ですから、糖尿病にかかられた方は症状の有無にかかわらず、必ず定期的に眼科を受診し、合併症がないか確認する必要があります。
日本人の失明原因の第1位は緑内障ですが、2位は糖尿病網膜症です。見えるから大丈夫という考えは捨てて、全く自覚症状がなくても半年に1度くらいの定期検査を必ず受けるようにしましょう。早期に発見して適切な治療を行えば、急激に悪化して失明するようなことはまずありません。人間に入ってくる外部情報の80%は目からと言われていますので、視力が非常に大切であることを自覚しましょう。



