小畠病院(福山市駅家町)

尿量、飲水量と排尿回数の関係

泌尿器科 宮本 克利医師

 泌尿器科の外来には、頻尿を主訴に多くの患者さんが来院されます。頻尿の患者さんには、ご自宅で排尿日誌を記録してくるようにお願いしています。排尿日誌は、トイレに行くたびに、排尿した時刻と、その時の排尿量を数日記録していただくものです。一部の人で、1日の尿量が多い方がおられます。ほとんどの方が、脳梗塞予防のために、飲水を多くされていると言われます。脱水が脳梗塞の原因であることは報告されていますが、過度な飲水が、脳梗塞の予防になっているというデータはなく、飲水後に血液粘稠度に変化はなかったと報告されています。余計に水分摂取すれば脱水にはなりませんが、頻尿にはなります。
 例えば、成人の膀胱は、我慢すれば400~500ml程度は溜まりますが、普段は、そこまで我慢することはないので、仮に毎回300ml程度溜まってトイレに行くとすると、1日尿量が1500mlなら、1500(ml)÷300(ml)=5回、1日尿量が3000mlなら、3000(ml)÷300(ml)=10回トイレ行くことになります。当然ですが、尿量が多いとトイレに行く回数も多くなります。尿量が多い人は、水分摂取も多いはずです。飲水が多い人で、頻尿で困るのであれば、適切に飲水することで排尿回数を減らすべきだと思います。
 では、適切な1日尿量がどのくらいかと言いますと、おおよそ20~25ml/kgと言われています。20ml/kgで計算すると、1日の尿量は、体重50㎏なら1000ml、体重70kgなら1400mlと言った値になります。今度は、適切な尿量を確保するのに、どれくらい飲水したらよいかと言うことになります。人の水分バランスは、体内に入る量(飲水、食事、代謝水)=体外に出る量(尿、便、不感蒸泄)になります。食事に含まれる水分量は摂取カロリー×0.4と言われており、2000kcal摂取すると、食事に含まれる水分は800mlになります。代謝水は、細胞がエネルギー代謝などを行う際に生じる水で、300~400mlになります。便には、およそ100~200ml の水分があります。不感蒸泄とは、呼吸の際に息に含まれる水分と、皮膚や気道の粘膜から蒸発する水分を合わせたもので、常温安静時で、健常成人で約900mlと言われています。大雑把に計算すると、飲
水+食事800ml+代謝水300ml=尿量+便200ml+不感蒸泄900mlとなり、この計算から尿量と飲水量が同じ程度になるので、適切な尿量を確保するには、尿量と同じくらいの飲水をするのでよいことになります。ここまでの計算は、常温安静時が条件ですので、汗をかきやすい夏場、運動時などは不感蒸泄が増えるので、その分、飲水量を増やすことで補うことになります。
 結局、その日の行動や、気温などで不感蒸泄が変わり、飲水量を変えることになります。毎日の尿量を測って飲水量を調整するのは、大変ですので、一度排尿量をチェックして、ご自分に適した尿量を知っておいて、普段より尿量が少ないと感じたら飲水を増やすなどの対応していくのがよいかと思います。

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*広報誌「葦」176号の記事(病気のコラム)より(pdfデータで読みたい場合はクリック)

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