泌尿器科 宮本 克利医師
泌尿器科には、健診で尿潜血陽性を指摘され、多くの患者さんが来院されます。実際は、診断がついて治療になる方は少数派です。小児を除く成人の健診での尿潜血陽性について血尿診断ガイドライン(2013年版、2023年版)などを参考に考察してみます。尿潜血とともに尿蛋白も陽性の場合は、腎臓病の可能性が高く、腎臓内科などを受診するように指示されることが多いので、今回は、尿潜血のみが陽性になる方が対象になると思います。
まず、尿潜血は、「テステープ」と呼ばれる試験紙を提出された尿につけて、試験紙の色の変化で判断します。色が変われば「+」で、色の濃さで+、2+、3+などになり、「+」が多いほど、血尿が強いと言うことになります。あくまでも簡易な検査になります。続いて、血尿についての説明ですが、目で見てわかる「肉眼的血尿」と、見た目でわからないが検査で判明する「顕微鏡的血尿」に分けられます。どちらも尿沈渣(尿を遠心分離し、顕微鏡で観察する検査)で赤血球を認めることが原則です。
これらのことから、尿潜血陽性は、赤血球を尿沈渣で確認していないので、必ず血尿と言うわけではなく、例として、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿と呼ばれる状態は、尿潜血陽性であるものの、尿沈渣で赤血球を認めないこともあります。ただ、これは少数派で、尿潜血陽性であれば、尿沈渣でも赤血球を認めることがほとんどです。
血尿の見た目以外の別の分け方として使われるのが、症候性(血尿以外の症状がある。例えば、頻尿、排尿痛、残尿感、腹痛など)か、無症候性(血尿以外の症状がない)になります。尿潜血陽性は、健診で指摘されてはじめてわかるくらいなので、症状を伴わない、見た目でもわからない血尿で、ほとんどが「無症候性の顕微鏡的血尿」になると思います。
重要な点は、健診で指摘される「尿潜血陽性、もしくは無症候性の顕微鏡的血尿」で、病気がみつかるか、病気のなかでも生死に関わる癌がみつかるかと言うことになるかと思います。ガイドラインなどでは、顕微鏡的血尿を呈する者のうち、0.2~5.2%に尿路悪性腫瘍が同定され、その多くは膀胱癌となっています。ただし、報告ごとに対象患者群の背景は異なっており、有病率はもっと低い可能性があるとされており、私自身の経験からも1%を超えることはないと思います。また顕微鏡的血尿を指摘され、一度精査を行い異常がなかった後の定期的な通院が必要かどうかと言うと、近年の報告では、定期的な通院は不要とされているようです。他の報告で、定期的にみたときに、ごく少数に癌が見つかりますが、いずれも3年以内に見つかっており、3年程度は経過観察を推奨するものもあります。私の意見としても、定期的な通院は、一度精査して異常がなければ不要と思いますが、心配な方でも3年経過を見て癌の出現がなければ、以後、尿潜血陽性のみであれば心配ないと思われます。毎年のように尿潜血を指摘される方も、癌などがあれば肉眼的血尿が出現しますので、むしろ心配ない印象です。