泌尿器科 大口 泰助医師
前立腺は男性だけが持つ臓器で膀胱の出口にあり、尿道を取り囲むようにあります。正常な大きさはクルミ大(容量は15-17CC )程度です。前立腺の機能としては主に精液の構成成分となる前立腺液の分泌が主な働きです。前立腺液は精子に栄養を与えます。前立腺には内腺と外腺があり、この前立腺の内腺が加齢とともに肥大することによってさまざまな排尿障害が出てきます。前立腺肥大症は50歳を過ぎると急増する病気で、50歳以上の5人に1人が前立腺肥大症であると推定されています。
症状
前立腺が肥大すると、中を通る尿道を圧迫することによって尿が出にくいなどの排尿困難と膀胱を刺激することによる頻尿、夜間頻尿などの畜尿障害などが起こってきます。
検査・診断
●問診:
自覚症状を点数化し重症度を評価(CLSS,IPSSなど)
●直腸診:
肛門より指を入れ前立腺を触診
●超音波検査(腹部エコー):
前立腺の大きさ、膀胱・腎臓の状態をチェック
●血液検査:
PSA(前立腺癌マーカー)チェックで前立腺癌と鑑別
●尿流量測定:
尿の勢い、1回排尿量、残尿などをチェックします
●内視鏡検査:
内視鏡で前立腺からの尿道の圧迫状態を観察します
薬物治療
●α1受容体遮断薬:
肥大により圧迫されている尿道を広げ、尿勢をよくする作用があります。早く効果が表れる薬です。
● 5α還元酵素阻害薬:
男性ホルモンの前立腺への作用を抑え、肥大した前立腺を小さくする薬です。効果の発現には数か月かかります。
症状の軽い方にはPDE5阻害薬や植物エキス製剤、漢方薬などもあります。
手術治療
尿閉(膀胱から尿が出ない状態)、尿路感染を繰り返す、膀胱結石ができる、腎臓へ影響が出る、薬を飲んでも改善がない場合は手術適応となります。現在では尿道から内視鏡を入れて行う経尿道的手術が主流です。
●経尿道的前立腺切除術(TUR-P):
30年以上前から行われている、標準的な手術で尿道より肥大した前立腺を少しずつ切除していく手術です。
●経尿道的レーザー前立腺核出術(HǒLEP):
レーザーで肥大した前立腺の内腺をくり抜いて、膀胱内で砕いて摘出する方法です。大きな前立腺には非常に有効です。
●経尿道的レーザー前立腺蒸散術(CVP・PVP):
尿道よりレーザーを照射して前立腺組織を蒸散させます。血をサラサラする薬を内服されている方も手術可能でTUR-Pと比べて手術時間も短く、入院期間も短縮されます。
当院ではレーザー前立腺蒸散術(CVP)を中心に経尿道的前立腺切除術も行っています。
あわせて読みたい関連記事
小畠病院 広報誌 葦 Vol.194
前立腺肥大症にについて