脳神経内科 小畠 敬太郎医師
頭痛雑感その3 祭りと片頭痛
30年以上昔、私が現在地に帰って父親の病院を引き継いで数年した頃、当時20代半ばの元気な青年(男性)が夜中から頭痛と吐き気があると言ってやってきました。ルーチンの診察やCT検査では全くどうもなく、くも膜下出血などの命にかかわるようなものはないと判断し、点滴一本したら落ち着きました。本人も1年に一度の祭りだったので酒を飲んで神輿を担いで、思いっきり騒ぎ過ぎたからかなあと言って帰っていきました。その後、私は忘れてしまっていました。
さて翌年またやってきました。今度はちょっと気になり興味もあったのでよく聞いてみました。この一年間は頭痛がなかった由。痛みの性質は群発頭痛のようなじっとしていられないような特徴的な痛みではなく、昨夜酒を飲んで神輿を担いでいる間に痛くなってきて吐き気も出てきたと。聞いてみると片頭痛の家族歴もありました。ここの夏祭りは派手な喧嘩神輿で有名で、毎年何人かのけが人が出ています。神輿の担ぎ手はとても素面ではやっていられないと、酒でも飲んで騒がないと耐えられませんよと。子供の頃その情景を見たことある私は納得できました。
真夏の暑い宵に酒を飲みながら神輿を担いで激しくぶつかり合うなんて、何と向こう見ずなことか・・・片頭痛の病気の素因を持つ者が、蒸し暑い中、大勢でアルコールを飲みながら激しい運動をする、なんて論外ですね。
彼は凝りもせず翌年も来院しましたが、その後が会っていないのでよくなってくれていることを祈っています。