小畠病院(福山市駅家町)

おなかに造った「第二の口」胃瘻(いろう)

消化器内科 原 睦展医師

口から食事がとれない方の長期にわたる栄養方法として、最近では経鼻栄養ではなく、胃瘻が選択されることが多くなりました。

胃瘻はお腹から胃に通じて人工的に孔をつくります。この孔はピアスの孔と同じ性質のもので、お腹と胃の一部がくっついて孔が完成してしまえば、傷ではありません。お風呂に入ることも出来ますし、特に大きく生活が制限されることはありません。

小畠病院では経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は経験のある消化器内視鏡専門医が行い、術後管理は内科・胃腸科で充分にフォローします。

おなかに造った「第二の口」胃瘻 (その1)

1)口から食事ができないと?
自らの口から食事がとれない人はどうやって栄養を得ることが出来るのでしょうか? 栄養を得る方法として一番思い浮かびやすいのが、点滴かもしれません。

点滴は血管に直接栄養を与える方法ですが、胃や腸が正常な場合はそれを使わないと様々なトラブルが起きます。従って、胃や腸が正常な場合は直接胃や腸に栄養剤を流し込む方法がとられます。その方法として、鼻にチューブを通す経鼻栄養という方法と、お腹から胃にかけて人工的に孔(あな)をつくり、その孔にチューブを通す胃瘻(いろう)という方法があります。

2)経鼻栄養と胃瘻とは何が違う?
経鼻栄養はわざわざ孔を作る必要はありませんが、チューブを鼻から通すこと自体に痛みを伴います。長期にわたって鼻にチューブを留置すると鼻の中にびらんや潰瘍が出来て、苦痛を伴うこともあります。また、のどから食道にかけてチューブがあるために食べる訓練がやりにくい問題点や、むせることが多くなり誤嚥性肺炎といった病気になることもあります。

胃瘻という方法は、経鼻栄養での痛みや精神的ストレスの問題が少なくなるだけでなく、のどから食道にかけて異物が存在しないために、食べる訓練もやりやすくなります。嚥下リハビリが順調にいき、口から食事が食べられるようになれば、この孔を簡単にふさぐことも出来ます。また病状によっては、飲み込むのが難しい液体(水分)を胃瘻から、訓練食を口からとるなど、使い分けながら食事をとることもできます.

最近では、長期にわたる栄養方法として胃瘻が選択されることが多くなりました。

おなかに造った「第二の口」胃瘻 (その2)

1)胃瘻はどうやって造るの?
お腹から胃に通じて人工的に孔をつくります。この孔を胃瘻といい、内視鏡を使って造ります。この内視鏡で胃瘻をつくることを、経皮内視鏡的胃瘻造設術の英語表記であるPercutaneous Endoscopic Gastrostomyの頭文字をとってPEG(ペグ)といいます。この孔をつくると同時に、チューブを留置します。このチューブを胃瘻チューブといいます。

2)胃に孔を空けても大丈夫?
胃瘻はピアスの孔と同じ性質のもので、お腹と胃の一部がくっついて孔が完成してしまえば、傷ではありません。お風呂に入ることも出来ますし、特に大きく生活が制限されることはありません。

口から食べられるようになりチューブが不要になれば、チューブを抜いて一日程度放置すればほとんどが自然閉鎖します。また、チューブにはお腹からほとんど飛び出さないボタン型といわれるものもあります。

3)特殊な胃瘻~経胃空腸瘻
胃瘻に留置したチューブを通じて胃に食べ物を与えても、腸におりずに食道にあがってしまう胃食道逆流症という病状の方もいます。もともと食べ物を口から飲み込むことができない嚥下障害という症状を併せ持っているので、食道にあがった食べ物が気管に入ってしまい、肺炎を起こしたりすることもあります。

頻回に起こるようでしたら、投与する栄養剤の形態を工夫したりしますが、それでも治らない場合は胃ではなく、小腸に食べ物を流し込む方法がとられる場合があります。この際に使用するチューブを経胃瘻空腸チューブといいます。

4)栄養剤の選択
胃瘻からはカロリー、ビタミン、ミネラルなどの最適な栄養バランスの栄養剤、水分、必要な薬剤を注入します。栄養剤はいろいろな種類がありますが、それらは患者様の体格や疾患に応じて決められています。

当院には、医師、管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床検査技師、理学療法士などの多職種で構成された栄養サポートチームがあり、一人一人の患者様の栄養状態、病態、体格を多角的に分析し、最適な栄養剤の選択、注入量、水分量、注入速度の決定を行っています。

5)胃瘻の管理は難しい?
胃瘻は一旦完成してしまえば、傷ではありませんので、日常的に栄養剤・流動食を注入し、清潔に管理することはご自身やご家族でも可能です。

胃瘻チューブは耐久性がありますが、約4ヶ月から半年に一回、定期的な交換を行います。交換は外来で行うことが可能です。また、何かトラブルがあれば、主治医がその都度対応いたします。

小畠病院での窓口

当病院では経皮内視鏡的胃瘻造設術は経験のある消化器内視鏡専門医が行い、管理は内科・消化器内科で行っております。

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