循環器内科 小畠 廉平医師
音楽を聴いていると、基本にリズムがあることはご存じの方もいらっしゃると思います。しかし元をたどると、それは人間の脈という生理現象にたどり着きます。音楽の途中でリズムが狂うと変に感じるのと同様に、人間の脈も乱れるといわゆる「動悸(どうき)」として不快に感じられる方もいらっしゃいますよね。
では人間の脈というのはどこからくるのでしょうか?
まず心臓の脈は、洞房結節(どうぼうけっせつ①)という場所から電気刺激として発生することから始まります。洞房結節は、4つある心臓の部屋の一つである右心房(うしんぼう)の壁の中にあります。
そこから作られた電気刺激は、次に同じ右心房より下の方にある房室結節(ぼうしつけっせつ②)というところに伝わります。電気刺激を伝える中継地点のような役割を果たしています。
房室結節を通り、今度は右心室(うしんしつ)と左心室(さしんしつ)の間の壁である心室中隔(しんしつちゅうかく)の中にあるヒス束(ヒスそく③)に伝わります。感じとしては太い送電線みたいなものでしょうか。
そして最後に、ここから右脚(うきゃく④)、左脚(さきゃく⑤)といってそれぞれ右心室、左心室につながる回路に伝わっていきます。
その結果、それぞれの心室の心筋(しんきん、心臓を動かす筋肉)が収縮しその結果心臓の中にある血液が全身に向かって押し出されていく仕組みになっています。
会社に例えると洞房結節(どうぼうけっせつ①)は社長、房室結節(ぼうしつけっせつ②)は部長、ヒス束(ヒスそく③)は課長、右脚(うきゃく④)、左脚(さきゃく⑤)が一般社員といったところでしょうか。当院に例えるとなると洞房結節が院長、房室結節は・・・(ご想像にお任せしましょう(笑))。
いずれにせよ房室結節が作り出す電気刺激のリズムが人間の脈となるわけであって、遅いリズムなら脈はゆっくりに、早いリズムなら脈は早くなるわけです(つまり心拍数として現れるわけです)。しかし実はリズムを早くするか遅くするかを決めているのは洞房結節自身ではないのです。上には上がいて、実は体の状態に応じて脳から自律神経(じりつしんけい)という神経を通して主に洞房結節へ指令を出しているのです。
会長さん、やはりいましたね(笑)。例えば運動しているときは体の筋肉は普段より多くの酸素が必要となりますが、そのためには酸素を運ぶ血液をたくさん送る必要があります。そのためにはどうしたらいいか?脈を増やして血液をたくさん送らなければいけませんので脳からそのように指令を出すわけです。寝ているときは体が休んでいる状態なので血液はそんなに必要ないので逆に脈をゆっくりにするよう調整しています。
さて簡単にお話させていただきましたが、脈の早さ(心拍数)は体の状態を元に脳が決定し、そこから自律神経を通して主に房室結節に指令が伝わり、「洞房結節→房室結節→ヒス束→右脚、左脚」と電気刺激が心臓内に伝わることによって作り出され体全体に血液が供給されるわけです。
いかがでしたでしょうか?わかりにくいところもあるかと思いますが、もしご不明な点などありましたら私の外来でおたずね下さい。さて、この流れが狂うことによって動悸(どうき)など症状が出てくるわけですが、それについてはまたどこかでお話させていただきます。