「パーキンソン病」について~その症状と診断~

脳神経内科 小畠 敬太郎医師

パーキンソン病の症状について

パーキンソン病は多くは大体40歳以降に発症しますが、基本的には運動障害による次のような症状が見られます。

1)じっとしている時(安静時)の手や足の震え「振戦」で、パーキンソン病の初期症状として最も多いものです。最初は左右どちらか一方から始まります。

2)筋肉が硬くなり「筋固縮・強剛」、本人には分からなくても診察するとき、手首や肘あるいは足を曲げ伸ばししてみると、筋肉の緊張が高まっているため強い抵抗があります。この症状も左右差が見られます。

3)日常のさまざまな動作が鈍くなります「寡動・無動」。まばたきが少なくなり表情が乏しい仮面様顔貌、言葉は小さくて早口になり、書いた文字が段々小さくなる、歩くとき腕の振りが消えて歩幅も小さくなります。

4)「姿勢反射の障害」のため転びやすく、歩くときは前屈みで小刻みな歩きで足が床に張り付いたようで前に足が出にくくなったり(すくみ足)、だんだん小走りになって止まれなくなる(突進歩行)こともあります。これらの症状は発症後しばらくして現れます。

そのほか先程述べた運動障害以外に、自律神経障害があり便秘は最もありふれたもので、そのほか脂ぎった顔、よだれが多い、起立性低血圧、男性では勃起障害などが見られます。精神症状として抑うつ的になる人が多いことが知られています。また幻覚や認知機能障害が見られることもあります。

パーキンソン病と診断されても現在では有効な治療薬がいく種類もあるので心配いりません。治療については次にお話します。

なおパーキンソン病に似た症状が見られるものをパーキンソン症候群といいますが、これには脳血管障害、特発性正常圧水頭症、多系統萎縮症などの変性疾患、薬剤性(他の病気の治療に使用されているお薬でおきるもので、日常よく遭遇します)、などがあります。

パーキンソン病の治療について

パーキンソン病が起きるメカニズムは、脳の深いところにある黒質と線条体という部位を繋ぐ神経ネットでドーパミンという神経伝達物質が減少することによります。正常な線条体ではドーパミンとアセチルコリンという神経伝達物質の働きのバランスがよくとれています。しかしドーパミンが減少することにより相対的にアセチルコリンの作用が強くなっています。したがってパーキンソン病の治療にはそのドーパミンを増やすような治療を行うか、アセチルコリンの作用を弱めるような薬剤を使用することになります。

治療は薬物療法が主ですが、1)減少しているドーパミンを増やす目的でその前駆物質であるL-ドーパを使用します。 しかしL-ドーパ単剤では大量に服用しなければならないので、現在ではL-ドーパとL-ドーパの分解酵素阻害剤とを配合した製剤が使用されています。L-ドーパはパーキンソン病のほとんどの症状に対して極めて有効で、この病気の人が普通に日常生活を送ることができるようになりました。しかし服用後の効果の持続時間が短いこと、5~10年と長期間服用することでさまざまな問題が現れてきたため、最近では2)ドーパミン作動薬が使われるようになりました。これらはドーパミン受容体を刺激してドーパミンと同じ作用をします。すなわちL-ドーパを服用したのと同様の効果があり、持続時間も長いのですが効果はそれほど強くありません。近年何種類かのドーパミン作動薬が使用できるようになりました。3)その他、①ドーパミンの放出を促す塩酸アマンタジン、②ドーパミン分解阻害剤であるセレギリン、③ノルアドレナリン前駆物質のドロキシドパ、④アセチルコリンを抑える抗コリン剤、などがあります。

薬物療法によく反応しても時間とともに様々な副作用や問題が現れることがあり、そのような場合に選択する方法として、脳外科において脳深部電気刺激(DBS)という治療法があります。

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